space
Antiquescopyrights
backgroundspacebackground
space space space
spaceribbonspace
Herald Tribune asahi
富士鳥居 代表取締役 栗原直弘
space space space space space
日本語に対する認識
前回は、第4節の「日本語と日本人」(4回連載)の一回目として、日本語が成立した日本の「特殊な地勢」、また「漢字の導入」による日本語と日本人の変化、さらに日本独自の「表音文字」である「仮名」発明の利点をお話ししました。先日、ある日本人読者の方から「当たり前の事として気にも留めていなかった、日本語という母国語を、あなたのコラムを読んで、改めて意識しました。」という、大変ありがたい感想が寄せられました。
 
よく、「日本人ほど自国に対する意識と認識が低い民族はいない。」と言われますが、これは以前からこのコラムでお話ししている、日本の戦後教育の欠陥によるものでしょう。私は美術商として、日々多くの外国人や海外と関わりのある日本人の方々と接してきた経験を踏まえ、本誌をお読みの皆様に、日本の実像や真実をお話ししたいと希望しています。さらに、先日このコラムに感想をお寄せ頂いた日本人読者の方のように、日本人自身が忘れかけている、この国の素晴らしさを一人でも多くの方に認識して頂くとともに、自らが生れた国に誇りを持って頂きたいと願い、このコラムを書き続けています。
 
 
言語とイメージ
前回のコラムにも書いたように、私は「漢字を日本語化したことで、日本人は瞬間的に物事をイメージする能力を発達させた。」と考えています。人間は会話をしながら、また文章を読みながら、意識の中に映像を浮かべています。たとえば、お気に入りのサッカー・チームの話をする時、我々はチームのロゴ・マークや昨晩の劇的なゴールシーンを無意識のうちに思い浮かべているのです。たとえそれが経験に基づいたものでなくとも、シェークスピアを読みながら、中世ヨーロッパの月明りに浮かぶバルコニーを、過去の情報の蓄積から、頭の中にイメージしています。
 
このように、人間の意識や思考はイメージと表裏一体を成しています。また、人間はイメージや画像によっても物事を認識し、思考しています。さらに我々は、物事を言葉や文字でも記憶し、過去に蓄積された語句や文節によっても思考を補完しているのです。そして日本人は、表意文字を日本語化したことによって、文字の「字面」だけで瞬間的に意味や内容を理解しています。これは日本人が、「言語を画像情報として認識する能力を獲得した。」ということでもあるのです。
 
 
膨大な言葉と文字
「漢字」の導入ばかりでなく、「仮名」の発明もまた、日本語が大きく飛躍した一つの要素でしょう。「仮名」は50音で表記する、日本語のアルファベットであり、前回もお話ししたように「仮名」には「ひらがな」と「カタカナ」の二種類があります。言語学的には、同じ「音」の表音文字はどちらかが自然淘汰されるものですが、日本人は、純粋な日本語の「音」には「ひらがな」を使い、外来語や擬音には「カタカナ」と、両方を使い分けてきました。「漢字」と同様に、このような「読み分け」や「使い分け」、言い換えれば、「言葉や文字の多様性」が日本語の最大の特徴であり、また面白さでもあるのです。
 
現在、日本で使用されている「当用漢字」だけでも1850字あり、二種類の「仮名」で100文字あります。さらにそれぞれの「漢字」と「仮名」を組み合わせる「送り仮名」によって、動詞、助動詞、形容詞など、掛け算で変化します。加えて、明治になると「仮名」をアルファベットで表記するために「ローマ字」の50文字が制定され、そして近年のグローバル化に伴い、日本人はさまざまな国の外国語を原語のままで、会話や表記に取り入れています。このように、日本人は膨大な量の言葉や文字を駆使して会話し、また文章を書いているのです。そしてまた、この膨大な量の言語情報の処理にも、「情報の画像化」という能力が活かされています。
 

space
日本人というハードウェアー
それぞれに多くの意味やイメージを含む膨大な言葉や文字を使用して、複雑に変化する言語を使用している日本人、言い換えれば、日本語という大容量のプログラムを起動している日本人というハードウェアーは、世界でも類を見ないのではないでしょうか。このプログラムには言葉や文字の「言い換え」や「使い分け」以外にも、「省略」や「敬語」といった独自のシステムが組み込まれています。日本人は、この「省略」によって新しい単語や言葉を作り出し、「敬語」によって、自らの立ち位置や状況を把握し、さらに物事の価値観を言語に織り込むことで、瞬間的に多くの情報を遣り取りすることができるのです。この「省略」や「敬語」については次回のコラムで詳しくお話しするつもりでおります。
 
前回と今回の二回でお話ししたように、日本において言語や文字は単なる情報の伝達手段ではなく、日本人の思考や感情にも深く関わっています。さらに日本には、「言霊」という考え方があり、「言葉」や「文字」自体がエネルギーを宿し、すべての事象に影響を与えていると考えられてきました。「祈り」という行為を例に上げるまでもなく、「人間の意識がすべてを創造する。」という考え方は有史以前から存在し、「人間の言葉や文字のエネルギーが物質化している。」というのです。私は最近、「古の聖人や哲人達の英知と、最先端の量子力学の世界が、歩み寄ってきているのではないか。」と、感じています。
 
(つづく)
 
space
space
footer
space
space
space