space
Antiquescopyrights
backgroundspacebackground
space space space
spaceribbonspace
Herald Tribune asahi
富士鳥居 代表取締役 栗原直弘
space space space space space
名前と敬称
この第四節の「日本語と日本人」第一回(www.fuji-torii.comで公開中)に対する、朝日新聞のこのコラムの担当者、英文メディア・グループの江刺(Mrs.)さんの感想に、「外国人の友人が、日本人は名前にも意味があって、ユニークだと言っていた。」というお話がありました。私の娘は11月2日生まれで「Akiko」と申します。日本では11月は秋にあたり、「音」の「Aki」は「秋」を、「Ko」は「子供」を意味します。漢字での表記は「亜生子」と書き、「亜(A)」の文字には「後継ぎ」という意味があり、「亜生子(Akiko)」の三文字で「アジアに生きる子供」という意味があります。また娘の愛称は、「亜生子」を短縮した「亜子(Ako)」であり、これは我が子に対する親の敬愛の呼称でもあります。このように、日本人の名前には多くの意味と表記があり、そこには親の思いが深く込められています。
 
またその表記も、「漢字」で「亜生子」、「ひらがな」の「あきこ」、「カタカナ」で「アキコ」と書くのとでは、日本人はそれぞれに違った印象を持つのです。加えて日本語には多くの「敬称」があり、「亜生子様(Akiko-sama)」や「あきこさん(Akiko-san)」、また「アコちゃん(Ako-chan」、さらに「アコ!(Ako !)」と呼び捨てにするなど、さまざまな表現と「敬称」の組み合わせを、状況や場所で使い分けています。そして、どの「敬称」を使っているか、或いは使っていないかによって、日本人はその状況や当該者との関係を判断しているのです。
 
敬語の意味
前出の「敬称」もその一部と考えられますが、日本語には、より複雑な「敬語」という表現があります。日本語における敬語は、英語の「Please」や「Sir」などの丁寧な言い回しや上下関係を明確にするばかりではなく、対象への「尊敬」や「愛情」、それを踏まえた上での「遠慮」を意味しています。
 
また、日本語の「敬語」には「献上語」「尊敬語」「丁寧語」などの種類があり、日本人はこれらの種類によって、使用している人の立場や価値観を理解し、さらにその使われ方によって、それぞれの状況や人間関係を把握しています。例えば、電話で話している人の「敬語」の使い方で、その人と相手の立場や人間関係、また対象に対する意識などを理解することができるのです。これは「敬語」が、日本人の「意識の表現方法」であることを意味しています。
 
ここで、読者の皆様に是非とも知っていただきたいのは、日本語において、「敬語」を使うという意識の根本には、「目上を敬い、和を尊ぶ」という精神性があるということです。それはまた、日本人の「敬愛の精神」と「謙譲の美徳」、森羅万象に対する「畏敬の念」の顕れでもあるのです。しかし、衷心から残念な事に、今の日本では、この「敬語」の使用が曖昧になり、大の大人が、場所や立場もわきまえず、若い学生の使うような言葉を使うようになりました。これもまた、日本の戦後教育の欠陥であると同時に、日本人自身が自国の素晴らしさを認識しなくなった結果でしょう。
 
「省略」と「造語」
このコラムの始めにお話した、私の娘の愛称のように、日本人は名称や語句の「省略」や「短縮」によって、新しい言葉を作り出します。この「造語」の機能もまた日本語の一つの特徴であり、これも日本語の文字にそれぞれ意味があるからこそ成せる技でしょう。
 
例えば、東京の「原宿」という街の「裏通り」に広がる、若者向けの店舗や文化圏の表現として、裏通り(Side rode)という意味のある漢字「裏(Ura)」と、地名を略した「原(Hara)」という漢字を組み合わせて「裏原(Ura-hara)」という新しい言葉を造り出します。
 
このような「省略」や「短縮」による「造語」によって、日本語は増殖、拡大を続けているのです。
 
しかしならが、「裏原(Urahara)」のような新しい言葉には、すでに同じ発音の別の意味の言葉(「裏腹」)が存在していることがあります。両者の違いは、文字で表記すれば一目瞭然なのですが、日本人は会話の中で、その話題や流れなど、それぞれの状況で判断し、使い分けています。さらに、その言葉を使っている人が、どの言葉を認知し、使用するかによって、その人の年齢や所属、また興味の対象などを判断しているのです。このような「同音異句」の使い分けが、外国人をして日本語を「テヴィル・ラングェジ」と言わしめる原因かもしれません。
 

space
「言葉遣い」と表記
今回お話してきた「敬称」や「敬語」、「省略」や「造語」以外に、日本語には、さらにもう一つの大きな特徴があります。それは「言葉遣い」と言われる、年齢や男女の差、生れた地域や生活環境、また立場や職業などによる、「言い回し」や表現方法の違いです。逆もまた真なり、日本人は、この「言葉遣い」によって対象となる人物の「人と成り」や「状況」を、ある程度理解しながら会話し、文章を読んでいるのです。
 
加えて日本人は、この「言葉遣い」の延長線上にある、使用する文字の形や筆記用具などによっても相手の人物像を予測しています。例えばこのコラムを、若い女の子の「言葉遣い」で、彼女達が使う「丸文字」や「ギャル文字」で書いたとすれば、日本人読者の多くは、若い女の子が書いたものと認識するでしょう。また手紙などに、日本の伝統的な筆記用具である墨や筆を使用して文字を著せば、それは在る程度年齢を重ねた趣き有る人からの書簡だと理解されるでしょう。これは前回のコラムでお話した、日本人が言語を画像として認識していることが基になっているのです。
 
(つづく)
 
space
space
footer
space
space
space