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Herald Tribune asahi
富士鳥居 代表取締役 栗原直弘
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美術商の家に生まれ
前回の、第5節の第一章でお話したように(fuji-torii.comで公開中)、現在の美術品市場は、世界規模の金融資本に翻弄され、日本ばかりでなく全世界的に美術品の評価や価格が混乱しています。最近、私は著述家や絵画や美術品のプロデューサーとして動くことも多くなりましたが、生業(なりわい)は古美術と美術工芸品を販売する「富士鳥居」と申します店のオーナーです。三代続く美術商の家に生まれ、物心つく前から美術品に囲まれて育ち、子供の頃から店に出入りする画家や職人達との付き合いの中で、知らず知らずのうちに物造りの心を学び、自らも学生時代には美術部に所属して絵画やデザイン、造形的な作品を制作いたしました。
 
修行時代にはジャンルを問わず、世界中から何万点と品物が集まる美術オークションで日々売り買いをし、また海外の史跡や美術館を巡って数多くの建築や美術品に触れ、20代後半からは弊店の仕入を一手に仕切ってまいりました。かくのごとく膨大な量の「美」に接し、それらを実際に売買してきた経験からも、私は現在の美術品の評価や取引には大きな疑問を感じ、警鐘をならすべく、この第5節を書き始めました。
 
真実は自ずから明らかに
このような時代にあって、私は本当の美術品の価値や価格、また一般の方には解かりづらい美術品の売買や流通をも含め、さらに美術品に対する意識や認識、「美」そのものの概念にまで踏み込んで、お話したいと希望いたしております。簡単に言えば、同じように見える美術品でも、それぞれに価格が異なるのは何故か、たとえば近年、美術市場を賑わしている中国古陶磁のように、数百ドルで取引されている物と、一見同じように見える物が一千万ドルで落札される理由、また何故そのような価格が着くのかをお話したいと思っております。
 
今でも現役で日々売り買いをしている美術商として、私が子供の頃から接し、学んできた「美」という概念に始まり、美術品という存在と価値、また価格や流通をお話しすることで、一人でも多くの読者の皆様が美術品をより身近に感じ、美術品に対する疑問や不信感を無くし、より多くの方に美術品に親しんでいただけるよう、真実を包み隠さずお話したいと希望しております。先ずは「美」という概念からお話ししてまいりましょう。
 
 
大前提として
このコラムで美術品を取り上げるにあたり、大前提として、読者の皆様にご理解いただきたいのは、美術品には大きく2つに分けられ、4つの種類があるということです。「2つに分けられる」とは、「自然発生的な美」と「人為的な美」、また4つの種類とは、「コレクターズ・アイテム」「学術的な価値」「純粋美術」そして「純粋芸術」の4つであり、今回のコラムでは、この2つの違いについてお話ししてまいります。
 
一口に美術品と言っても、そのジャンルは日本美術だけも絵画や彫刻、陶芸や漆芸、染色や服飾など、さまざまなものがあります。そしてこれらはそのジャンルに関係なく、大きく2つに分けることができます。それは1から10まで人の手によって成された物、言い換えれば「人為的な美」と、もう一つは絵付けなどをしない陶器のように、火の力や自然の成り行きにまかせて作られた「自然発生的な美」であり、これにはパフォーマンスによる現代アートなども含まれます。
 
 
人の手と自然の力
もちろんこれは美術品に限らず、読者の皆様の周りの物すべてが同じ分け方ができるのですが、美術品を理解する上で、この違いは大きなポイントとなります。
 

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言い換えれば、「人為的な美」とは長い歴史や文化における「美」という概念を追求し、人の意識とエネルギーによって、他の評価を得るために造られた「美」であり、また「自然発生的な美」とは、大自然と宇宙の力を借りて、ある種の偶然性に身をゆだねて創られた「美」であり、それらは発生後に人の意識や社会的な価値観によって評価される「美」なのです。
 
具体的な例を挙げれば、日本の絵画(Nihonga)や日本を代表する漆工芸の古典や近代の作品のように、画家や作家が技術的な研鑽を重ね、その精神性までをも高めて造り上げた「美」は、その好き嫌いこそあれ、万人に受け入れられる「美」であり、年月や社会の変化による評価は安定しています。また、また実用品として生れた、日本の備前焼や信楽焼などの陶器や自然な絵付の陶磁器、木製品の手ズレを鑑賞する「民芸品」などは、それらを評価した人々の意識によって生れた美術品なのです。読者の皆様には、美術品がこのように大きく2つに分かれることを、先ず以ってご理解いただくために、次回のコラムでは、この2つの分け方を、さらに詳しくお話ししたいと思います。

 
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