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Herald Tribune asahi
Japanese People Do Not Know Japan
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昨年の秋から始まった第五節では、美術品を鑑賞・収集する上で、基本となる「美」という概念についてお話しをしておりますが、前回までは、「美」というものが、その成り立ちにおいて、大きく二つに分かれることをお話しいたしました。さらに、今回からは、「美術品」や「収集品」といわれるものは、それぞれの意味合いや評価によって、大きく4種類に分けられることを、お話したいと希望しております。
 
一口に「美術品」や「収集品」と言っても、それらのすべてが一般的に云う「美しい物」とは限らず、それぞれの制作の意識や評価において、「純粋美術」、「純粋芸術」、「収集家の美」、そして「学術的な美」の4種類に分類する事ができます。もちろん物事には例外がありますし、上記の4種類の条件を複数満たしている存在もあります。そして、一般的には、より多くの条件を満たしているものほど、その流通における金銭的な評価は高いとされますが、しかし、多くの条件を満たしているからといって、万人に受け入れられるという訳ではありません。このことを踏まえて、先ずは「純粋」に「美しい物」を造ろうとして成された、「純粋美術」について、その意味や美術品としての評価をも含めて、お話ししたいと思います。
 
純粋美術

ここで言う「純粋美術」とは、純粋に「美しい」ということを追求した日本画や漆芸などのように、人が人の手で、人の笑顔や満足を創ろうとして成された「美」を指します。これには、「装飾美術」や「工芸品」も含まれ、それらは大自然が織り成す万物の造形や色彩などを根源として、人間という存在が発生した有史以前から、人が心地良いと感ずる「美」を言います。さらに、「純粋美術」とは多くの人が美しいと認める「美」であり、それぞれの時代の集合意識を反映してきた「美」でもあります。これらは、人が美しい物を造りたいという内なる衝動によって造られ、その作品を制作した時点までに造り手が積み重ねてきた技術や経験と共に、彼等自身の「美」への研鑽、さらに人としての在り方や意識など、それぞれの人生が凝縮しているのです。また、このような「純粋美術」が時を越えて守り伝えられてきた古美術には、それらを守り伝えて来た人々の思いやエネルギーも含まれているのです。
 
美の波長

この第五節の一つのテーマである、「美」とはエネルギーであり、美術品とは、それらに関わった人々のエネルギーが物質化したものであるということ、そして私達は、そのようなエネルギーを内包した「美術品」から発せられる、ある種の「波長」を「美」として認識していることを、前回もお話ししました。
では、その「波長」とは何かを、「音」を例に挙げてお話すれば、人間の耳に聞こえる「音」には、人の声や音楽などのさまざまな周波数帯があり、それを越えたところに超音波が存在するように、「美」というものもまた特定の周波数帯を持つ存在であり、そのような波長を我々が形や色として認識していると考えています。
 
我々プロから見れば、同じ白い紙に墨で一本の線を引いたとしても、ただの汚れのように見える線があれば、水墨山水の稜線のように見える線もあります。それは、その紙の上の位置、筆致や濃淡によって、「美しい」と認識される特定の振動数を持つからだと考えています。そして、人それぞれの好みも、色や形の好き嫌いばかりでなく、どのような「波長」と同調するか否かということでしょう。そして、このことはFM波をAMラジオで聞けないように、それぞれ「美」の周波数に同調しなければ「美しい」とは認識できないということであり、さらに「美」の周波数に同調できるか否かは、私たち受信機側の問題でもあるのです。
 
波長の意味

実は、私達の身の回りのものはすべて、自然界の物質を人のエネルギーで物質化したものなのです。今、皆さんのお手元にあるコーヒー・カップやパソコンなども皆、自然界の物質を人のエネルギーによって固定化しているという意味では同じものなのですが、それらは、コーヒーを飲む、仕事をするという、それぞれに違う目的や役割によって物質化されています。このように、美術品には美術品としての目的や役割があり、実用品の制作とは違う意識、違うエネルギーによって物質化されたものなのです。
 
そして、今回お話ししている「純粋美術」とは、人が「純粋」に、人のために「美しい物」を造ろうという意識と技術によって、その作品に込められたエネルギーが、「美」という波長を出しています。やはり、それらは量産された日常の消耗品とは違う波長であり、同じ美術品と呼ばれるものでも、それぞれの振動数には違いがあるのです。次回からお話しする「純粋芸術」も、内包するエネルギーの違いによって違う波長を出しており、そこに込められたエネルギーや波長の違いを、今回の「純粋美術」と比較しながら、「純粋芸術」、「収集家の美」、そして「学術的な美」に分けてお話してまいります。
 
つづく
 


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