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Herald Tribune asahi
Japanese People Do Not Know Japan
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「純粋芸術」とは

早いもので、この「日本人の日本知らず」というコラムも今回で24回目を迎えます(バックナンバーはwww.fuji-torii.comで公開中)。このコラムの目的は、グローバリゼーションの名の下に埋没しつつある日本の文化や日本人の心を、読者の方々に知ってもらうことにあります。しかし、このような流れは日本に限ったことではなく、世界中の国で起こっている現象でしょう。この第5節では、「美」というものを通して、いかに我々が多くの刷り込みによって捏造された価値観に惑わされているかをお話しいたしております。
 
数年前、ある日本政府の関係者が私の店で総理大臣のナショナル・ギフトをお求めになられた時、その方から「富士鳥居さんは、品物を造っている人の顔が見えていますよね。」と、念を押されたことがあります。私の店は親子三代、日本製の手造りにこだわってきましたので、作家や職人も親の代から付き合いのあるものばかりで、ほとんどの職人や産地の関係者を把握しています。しかし、近年では、日本製のサンプルを他のアジアの国に出してコピーを作り、製品の箱詰めだけを日本で行っている産地も多いのです。政府関係者が言うには、そのような物は海外のチャイナ・タウンなどにバッタ価格で出回ることもあり、「政府関係の贈り物としては怖くて使えない。」というのです。
 
芸術の意味

現実に、多くの日本の工芸品や美術品はアジア諸国でコピーされており、雑貨品などでは、日本の物を探す方が難しくなってきました。また、海外のオークションなどでも、一般の日本人には解らないほど精巧な古伊万里や薩摩焼のコピーが出回ることがあり、また外国人の方達がお好きな日本の箪笥なども、すでに本物の古い箪笥は市場から消え、数年前までは韓国で古材を使って日本の箪笥をコピーし、時代付けをしたものが日本市場に出回っていましたが、今ではその多くが中国で生産されています。もちろん、そのような事実を知った上で、「日本風」の箪笥として購入するなら問題はありませんし、それなりの価格ならば納得もできるでしょう。しかし、一部の粗悪品は、今の空調では反りや狂いを生じ、一冬で使用できなくなるものもあります。
 
実はこのような、外国人に粗悪品を売りつけることは昔から行われており、一部の外国人相手の業者などは、「どうせ外人は本物が解らないから。」と、外国人が好むような「フジヤマ」や「ゲイシャ」「サムライ」といったデザインの粗悪品を売ってきた歴史があります。それは、日本を訪れる外国人観光客用のお土産品などはより悲惨な状況で、正に国籍不明な絵画や工芸品が売られています。例えば、観光客専用に売られている浴衣や着物などは、その殆どが日本以外の国で造られたペラペラの化学繊維で出来ており、日本人ならば、頼まれても買わないものが多いのです。私は日本人として、情報や知識の無い外国人にこそ本物を売るべきであり、このような行為は大変恥ずかしいと考えています。
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日本の在り方

私達日本人も海外旅行に行き、ハワイの雑貨店で冷蔵庫にメモを止める「ハワイ」の文字の入ったマグネットを買います。もちろん、それがアメリカ製である必要はなく、記念になれば良いのであり、簡単なお土産ならば予算の問題もあるでしょう。最近では、日本の観光ガイドの人達が外国人観光客を百円ショップに案内することがあると聞きますが、私が或るディスカウント・ショップで見た「日本風の美人画」は、芸者らしき女性が頭に沢山お箸を差し、韓国のチマチョゴリを来て、富士山の下を歩いている、国籍不明の絵でした。
 
もちろん、ガイドの方々にすれば、そのような絵をお客様がお気に召し、値段も安いので購入したいと言えば、それを止める理由はないかもしれません。しかし、本物の日本の工芸品や美術品を見せることなく、何のチョイスもなければ、ガイドを依頼された外国人に対して大変失礼な話しであり、それ以上に問題なのは、そのような絵画や工芸品が、日本の物として世界中に売られて行くことなのです。
 
「本物」から「本質」へ

前項をお読みになった在日外国人の皆様は笑っておられるかもしれませんが、実は、このようなことは皆様にも起こっています。何故ならば、戦後60年の間に、日本の工芸品や美術品に関する情報自体がかなり曖昧になっているからなのです。私のお客様の中には、ご主人や奥様が日本人という方がおられますが、そのような日本人とご結婚なさった外国人の方でも、日本の文化や美術に詳しいとは限らないのです。たとえ配偶者が日本人であろうと、その外国人の方がどれほど長く日本に住んでいようと、その人に与えられた情報自体に間違いがあれば意味がありません。
 
日本人は、外国人の皆様がお考えになるほど日本の事を知りませんし、まして工芸品や美術品に対する知識は皆無に等しいでしょう。このような状況は、戦後の日本では自国の歴史や文化に対する教育は置き去りにされ、また、核家族化が進んだことで、年長者から次の世代への文化の伝承が途絶え、まして、工芸品や美術品に関する教育はなく、多くの人が本物を目にする機会がなかったからなのです。このことは、日本人が自分の国に対する意識すら無くした原因となっていると考えます。故に、外国人の方々が、このような日本人から日本の工芸品や美術品の知識を得ようとしても無理であり、日本人の口から出た、その場しのぎの間違った情報が、外国人の間で独り歩きをしている場合も多いのです。
 
つづく
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